遊泳

猫、或いはサイエンス

揺り椅子ゆらすような旅の

あるひとつのことばを手がかりに、少し長い旅に出ることにしました。
そこは湿度が低くひんやりとした空気をもっていて、そのくせ頬に触れる風は心地よく吹いているのでした。
その場所にいると、色を深めていく常緑樹に囲まれた森林の中で大木にもたれながら本を読むような、そんな感覚にふと陥るのです。

穏やかな天気ばかりではありませんでした。
細かい針のような雨に刺されたり、掴めそうなほど低い雲が身体にまとわりつく夜もありました。
けれどその向こう側には微かに見え隠れする星のきらめきがあり、その事に気づいてしまったらもう、引き返すことなどできないのでした。

更に歩みを進めていくと、見晴らしのよい高台があったり、崖っぷちすれすれの道があったり、水を湛えた湖があったりもしたのですが、そのことばはそんな場所へ辿り着く途中の道に何気なく転がっていたのでした。

私はあまりに驚いて、でも、ああなるほどなあ、と感心しながら、気がついたら微笑んでいたのです。
そしてそのことばを拾ってまた、私は歩きだしたのでした。
Dec.07,2014